楽園追放-Expelled from Paradise- ネタバレあり感想

すんげー面白かった。
感想を思いつくままに書き殴ってみる。

●テーマのあるイイ娯楽映画
活劇があって興奮させつつ、社会についてのテーマやメッセージもあり。

楽しく笑って、ちょっとホロリとして、上映後はどこまでも爽やかな読後感。
娯楽として上質の映画だった。

●映画館で観たい作品
どのアクションシーンも、サイバースペースも宇宙も地球も、

映画館の大スクリーンと大音響だと、
面白さが何倍も増す。ぶっちぎりでパないレベルで面白くなる。
映画館で観て本当によかった。

●個人的に
にこにこしながら観てしまうシーンがてんこもりだった。
好きなSFネタしかり、微笑ましいあの登場人物の存在しかり。
観ている途中も、観終わった後も、自然と笑顔になってしまう。
こんな娯楽映画体験、なかなか稀有で素敵。

(以下ネタバレ)

サイバースペースでの電脳戦
映画館大画面大音響でテクノミュージックに乗ってバトル開始の演出で、
もうテンション上がりまくり。
自分はニューロマンサーあたりのサイバーパンク小説とか、攻殻機動隊漫画あたりとか読んで空想膨らませてた世代なので、たまらない演出だった。
そしてまさかのサイバースペースでの板野サーカス。一気に引き込まれた。

●蟲退治
ちぎっては投げちぎっては投げもよいし、
沢山の蟲にロックオン照準がどんどんついていくシーンのかっこよさったらない。

●ロケットのロマン
まず中盤「これロケット燃料だよね」から推理が始まる時点でもうロマンに溢れてる。
そして終盤のロケット発射防衛バトル!
このストーリー展開は本当にロマンで、めっちゃ盛り上がった。
オネアミスへのリスペクトを感じる(演出面でも)。


●好きから生まれる命
フロンティアセッターが自己を認識したときのエピソードが楽しい。
「好き」「好きとはなにか」から「我は、我である」にたどり着いたっていいじゃない、
という爽やかなオプティミズム

●オメラスから歩み去った数人を描いた作品

ある意味ではそうだと思う。
狭義のオメラス(そんな犠牲を知ってもあなたはオメラスに住み続けますか?)よりは
広義のオメラス(そんな楽園からはエクソダス、しようぜ)のほうに近い。

●みため楽園、実際ディストピア
政府にとっての成果を上げられない人は、生きるためのリソース配分を減らされる、最悪アーカイブされ凍結(ほぼ死)で、
まずハーモニー(伊藤計劃)のリソース意識を連想した。
そして1984(ジョージ・オーウェル)や、PSYCHO-PASS、その他いろんなディストピアものを彷彿とさせる。

そんなディーヴァ政府の謳う「無限の可能性」というプロパガンダを「嘘」と喝破するディンゴがかっこいい。
CMでもあった、このディンゴが思いを語るシーンは、名シーンの一つと思う。

●3つの板野サーカス
まず冒頭サイバースペースでの板野サーカスが圧巻で刺激的。
次に後半、宇宙空間での板野サーカスは脳汁ドバドバ出て震えるくらいエキサイティング。
そしてラストバトル、廃墟ビル街と青空での板野サーカスはドラマチックで熱い。
もちろんサーカスだけでなくその前後のバトルも含めて、
どれもこれもめっちゃかっこいいシーンだった。最高!

●緑の星のアンジェラ
ラストバトルでアンジェラが一瞬幻視した、緑の大地。
それは未来の可能性かも知れない。ディーヴァの支配とは別の形で再生した地球がありうるかもしれない、そんな未来。
アンジェラの台詞「まだこの世界を、ろくに知らない」と相まって、印象に残るシーンだった。

●ポストヒューマンの親離れ
終盤、フロンティアセッターを地球人と認めるディンゴがかっこいい。
それは異人種への寛容でありまた、人類の子であるAI(人工知能)に対して、
親が「お前はもう立派に育った一人前の人間だ」「独り立ちしてどこでもやっていける」と言祝ぐことでもあると思った。
親から子へのエールでありつつ、同じ歌が好きな友達へ、旅立つ仲間への言葉でもある。この物語の中でも好きなシーンの一つ。


●音楽が結ぶ友情
音楽アーティストの話で意気投合するディンゴとフロンティアセッター。
そしてあろうことか自分のアレンジ曲を披露するフロンティアセッターに(ここは楽しい驚きだった)、
ギターでセッションまでしてしまうディンゴ

セッション後のギターチューニングも実にライブ感があり、よい。


自分と大きく異なる他者との交流を、こういった形で心地よく描き、それを
この映画の尺のなかでエピソードとして成立させるのは、並々ならぬことだと思う。素晴らしい。

地球から去るフロンティアセッターへ、餞として歌を贈るディンゴ。これまたかっこいい。
それがスタッフロールのエンディングテーマともリンクしていて、
スタッフロールに爽やかな感動とちょっとした驚きを与えている良い演出。
そして最後にフロンティアセッターも歌を口ずさむ。HAL9000ネタとしてもニヤリとしたけど、
歌に対して歌を返す、あるいは大きく違う存在同士が同じ歌で通じあっている、
という演出は、他者との関係性のテーマを描く上で、ロマンチックで素晴らしいものだった。

上映の最後の1秒まで好きなシーンという体験、上映後もつい顔がほころんでしまう体験。そんな体験をさせてくれたこの映画、気に入った。